病態
アレルギーや心理的、身体的、環境的などの様々な要因が原因にとなり、肥満細胞からの化学物質の遊離、β受容器のブロックによって交感神経が優位となる。すると、気管支の平滑筋の収縮、気管支粘膜の浮腫・腫脹や粘膜からの分泌物が貯留して、広範囲な気管支の狭窄が起こり、喘息発作が出現する。
その結果、喘鳴を伴った呼気性の呼吸困難が現れる。肺胞は過膨張の状態で吸気も困難となり、気管支の攣縮に加え、肺胞は収縮しているため気道は虚脱になりやすく、呼気が出来ない状態となる。呼気性の呼吸困難が特徴的だが、呼気、吸気伴に呼吸困難になる。ガス交換が十分に行えず、重度な発作になると、炭酸ガスの貯留によりチアノーゼや意識障害が出現する。
分類
・外因性喘息 外界にある抗原物質を吸入することにより、生体内での抗原と抗体が結合して、肥満細胞からヒスタミンやそのほかの化学物質が遊離することで、気管支の粘膜からの分泌物が過激となり、粘膜は浮腫状態となる。
・内因性喘息 外因性の気道の過敏性の根拠がなく、非季節性で、過去に重度な気道狭窄にかかわったこともなく、年齢のいかんに関わらず発症する。
症状
・咳嗽
気管支腔内に分泌物が増加、貯留するため、咳嗽中枢を刺激し、痰を排除するため反射として起こる。咳嗽が頻回になると、さらに喘息発作を誘発することもある。
・喀痰
血管の透過性の亢進、粘液腺の分泌刺激により、気管支粘膜からの分泌が桜花、貯留する。
・喘鳴、ラ音
呼気時に多く認められる。喘息発作では抹消気管支に広範囲な閉塞性の変化が生じて気道抵抗が増大し、呼気を十分に行うために必要な圧が及ばなくなり、虚脱しやすい状態になる。そのため、胸腔内圧が陽圧となり、気管や太い気管支まで狭窄するため喘鳴が生じる。
ラ音は気管支の狭窄や攣縮が強くなると出現するが、聴診器で聴取される。
・呼吸困難
気管支平滑筋の攣縮、気管支腔内に分泌物の口唇、気管支粘膜の浮腫、炎症などによっ
て気管支の閉塞が亢進することにより生じる。呼吸困難の増強とともに、肋間腔、胸骨
上部などの陥没、鼻翼呼吸、呻吟(シンギン)や他呼吸により呼気は延長し、起座呼吸、チア
ノーゼ、四肢冷感、不穏状態などが生じる。
・脱水
呼吸困難にともなう気道からの不感蒸泄の増大や、水分摂取困難による。脱水によって気道からの分泌物の粘稠度が高まり、痰の喀出が困難となる。また、脱水により、血液は濃縮され、循環血液量が減少し、循環不全になりショックを起こすこともある。
検査
・鼻汁、喀痰検査
気道分泌物に好酸球の増加
・血液検査
血液中好酸球の増加、IgEの増加、RAST(血清中の抗原物質の抗体価)
・皮膚テスト
➀プリックステスト(抗原エキスを1滴垂らし、その箇所を小さく穿刺)
➁スクラッチテスト(抗原エキスを1滴垂らし、その箇所を擦過)
➂皮内テスト(抗原エキスを皮内に注射)
→48~72時間後(IgE非抗体依存性の遅延型反応)紅斑、浮腫、丘疹、水疱など
20~30分後(IgE抗体依存性の即時型反応)膨疹形成など
・呼吸検査
努力肺活量、1秒率、1秒量、最大換気量、ピークフロー時の低下
・胸部X腺検査
胸部の拡張、横隔膜の下降、心陰影の縮小、肺門影の拡大
治療法
小発作 | 中発作 | 大発作 | 呼吸不全 | |
呼吸の状態 喘鳴 陥没呼吸 呼気延長 起座呼吸 チアノーゼ 呼吸数 | 軽度 なし~軽度 なし 横になれる なし 軽度増加 | 明らか 明らか あり 座位を好む なし 増加 | 著明 著明 明らか 前かがみになる 可能性あり 増加 | 減少または消失 著明 著明 あり 不定 |
覚醒時における小児の正常呼吸数の目安 | <2ヶ月 <60/分 2~12ヶ月 <50/分 1~5歳 <40/分 6~8歳 <30/分 | |||
呼吸困難感 安静時 歩行時 | なし 急ぐと苦しい | あり 歩行時著明 | 著明 歩行困難 | 著明 歩行不能 |
生活の状態 話し方 食事の仕方 睡眠 | 一文区切り ほぼ普通 眠れる | 句で区切る やや困難 時々目を覚ます | 一語区切り 困難 障害される | 不能 不能 |
意識障害 興奮状態 意識低下 | 正 なし | やや興奮 なし | 興奮 ややあり | 錯乱 あり |
PEF 吸入前 吸入後 | >60% >80% | 30~60% 50~80% | <30% <50% | 測定不能 測定不能 |
SpO2 大気中 | ≧96% | 92~95% | ≦91% | <91% |
PaCO2 | <41mmHg | <41mmHg | 41~60mmHg | >60mmHg |
気管支拡張に優れ、即効性のある短時間作用β2刺激薬の吸入が治療の中心であるが、軽度時には内服も有効である。安静と伴に、補益、酸素吸入(SpO2<95%で考慮)、腹式呼吸や排痰の介助などの理学療法、気道感染などの合併症の治療を適宜組み合わせる。
1小発作 β2刺激薬の吸入(20~30分間隔で3回まで反復可能)
2中発作 β2刺激薬の吸入。改善しない場合もβ2刺激薬吸入を反復しつつ、ステロイド薬の静注・内服、気管支拡張作用を有するアミノフィリンの点滴静注を追加する(両者の併願も有効)。なお、テオフィリン(アミノフィリンは体内でテオフィリンとして作用)による中毒や痙攣の防止に注意する。
3大発作 β2刺激薬吸入を反復しつつ、ステロイド薬の反復静注とアミノフィリンの持続点滴を行う。改善が不十分な場合は、イソプロテレノール持続吸入法を追加する。呼吸不全の場合は、人工呼吸管理の適応を考慮する。
➀アレルギー面
肥満細胞上でIgEが抗原と反応し、肥満細胞よりヒスタミン、セロトニン、ロイコトリエンなどが放出さ
れ、平滑筋収縮が起こる。また抗原が体内に侵入し即時型の反応として起こるTリンパ球、好酸球を介し
て抗原がTリンパ球を活性化し、それが好酸球を遊走活性化させ、好酸球からロイコトリエン、ベーシッ
クプロテインなどが放出され、平滑筋収縮をもたらす。
・アレルゲンの除去
ダニ、ハウスダスト、カビ、動物 住居内の清掃
食物 喘息の原因となる陽性の場合、加工食品を含め摂取しないようにする
・運動療法 運動は喘息発作を引き起こしやすい(運動誘発気道収縮)。そのため、運動の種類(水泳)、進め方(準備体操、マスクの着用など)を患児に合わせて工夫し、取り組む
・薬物療法 長期管理薬(コントローラー)の中核は抗炎症薬であり、なかでも吸入ステロイド薬とロイコトリエン受容体拮抗薬が重要である。
吸入ステロイド薬 直接気道に到達して気道炎症を強力に抑制する。
効果 軌道に到達した薬療で決まるため、吸入方法の適切な選択と十分な吸入指導が必要 副作用 通常の吸入ステロイド薬では全身性の副作用(最終身長の低下、副腎皮質機能抑制、骨
代謝障害)は稀であるが、使用が長期に及ぶため、副作用に対する注意と漠然とした使
用の回避が求められる。
テオフィリン徐放薬・長期作用性β2刺激薬 気管支拡張作用を長時間にわたって発揮し喘息発作を予防する薬剤であり、原則として抗炎症薬と併用する。良好なコントロールを得られても薬剤の減量、中止を急がない。
看護
観察 異常呼吸の有無(陥没呼吸の有無、方呼吸の有無、起座呼吸の有無、多呼吸の有無)
SpO2値
呼吸音(呼吸音の減弱の有無、呼吸音の左右差の有無)
・酸素投与を確実に行い、体位は楽に呼吸が出来るよう起座位にするなど、患児に合わせた体位を援助する
・発作は入眠1時間後、死にゃ、明け方が出現しやすいため、この時間帯は特に症状観察に注意する
・喘息の要因には精神的問題も含まれているため、患児が不安にならないような落ち着いた関係性を作り上げる
砂糖萌🐾
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