小児の呼吸【呼吸困難】

小児の呼吸の特徴

新生児、乳児期
→胸郭が柔らかく、呼吸筋が弱い 中枢神経が未発達、胸式呼吸
 呼吸中枢が未発達、上気道が狭い

幼児期
→構造上の未発達は改善胸郭が成人に近づき、呼吸筋が発達 胸腹式呼吸

呼吸困難をきたす疾患

急性疾患感染性呼吸器感染下気道感染症(細気管支炎、気管支炎、肺炎)、 グループ症候群、 百日咳、 胸膜炎、膿胸
中枢性髄膜炎、脳炎
呼吸筋・神経性 急性脊髄前角炎(ポリオ、急性灰白髓炎) ジフテリア ボツリヌス症 破傷風 ギランバレー症候群 サリン(毒物)
非感染性呼吸器異物誤飲 気胸、外傷、血胸 縦隔気腫 肺塞栓症 気道熱傷
アレルギー性アナフィラキシー、喉頭浮腫
中枢性脳内出血
慢性疾患反復性アレルギー性気管支喘息 アレルギー性気管支肺アスペルギルス症 過敏性肺炎
心因性過換気症候群 神経性咳嗽 ヒステリー発作 詐病
持続性先天性先天的構造異常(上下気道狭窄、閉鎖) BPD後遺症 先天性心疾患
肺疾患突発性びまん性間質性肺炎 慢性閉塞性肺疾患 慢性気管支炎、肺気腫
呼吸筋性重症筋無力症 脊髄性筋萎縮症、 進行性筋ジストロフィー症
膠原病皮膚筋炎
中枢性脳腫瘍、原発性肺胞低換気症候群

呼吸困難を疑う症状

乳幼児年長児
他覚症状自覚症状他覚症状
多呼吸、鼻翼呼吸、陥没呼吸、下顎呼吸、喘鳴、チアノーゼ、呻吟、不機嫌、哺乳力・食欲低下、腹部膨満 顔色不良息苦しい、胸痛、頭痛、眠気、疲れる多呼吸、鼻翼呼吸、陥没呼吸、下チアノーゼ、肩呼吸、苦悶表情、起座呼吸、発汗、食欲低下、活気のなさ 顔色不良、不眠

呼吸困難(ヒューンジョーンズ)の分類

同年齢の健康者と同様の労作ができ、歩行、階段の昇降が健康者並にできる
同年齢の健康者と同様の労作ができるが、坂、階段の昇降は健康者並にはできない
平地で健康者並の歩行困難、自分のペースで1.6Km歩行可
休みながら50m可
会話、更衣で息切れ、息切れのため外出困難
起座呼吸

観察

【視診、触診】

1意識レベル

2循環器症状

  • 血圧低下
  • 不整脈
  • 奇脈:腹腔内圧が上昇すると収縮期血圧が吸気時に低く呼気時に高く変動(差10mmHg)
  • 異常発汗:皮膚温低下
  • 脈拍
  • チアノーゼ:還元ヘモグロビン5g/dl以上
  • 浮腫

3瞳孔:縮瞳

4呼吸

  • 過呼吸:代謝や酸素消費量以上の換気量の増加状態。呼吸性アルカローシス(分時換気量増大、PaCo2低下)
  • 多呼吸:1回換気量増加、呼吸数の増加
  • 頻呼吸:換気量正常、呼吸数増加
  • 無呼吸:呼吸停止
  • スクマウル呼吸:深い多呼吸
  • チェーンストークス呼吸:呼吸と無呼吸が交互
  • 下顎呼吸:吸気時ごとに下顎を下方に動かして口を開け呼吸補助筋を始動して最大の分時呼吸量を得ようと                   する無意識的な呼吸で予後不良の兆候
  • ビット呼吸:呼吸数、深さ、リズムが不規則。
  • 呻吟呼吸:呼気時うめき声で肺胞虚脱を防ぐ。

5胸郭の動き

  • 陥没呼吸:吸気時胸腔内陰圧の程度を示す
中等度胸郭上窩陥没
高度乳線上の肋間陥没

           

  • シーソー様呼吸:吸気時腹部全体陥没、腹部が上昇。陥没呼吸の悪化。
  • 鼻翼呼吸:呼吸困難により呼吸量増大するため吸気時鼻翼を広げる。
  • 肩呼吸:呼吸困難により呼吸量増大するため肩を上下させて呼吸する。
  • 起座呼吸:循環動態改善し呼吸筋の活動性が回復しやすい

【聴診】

1喘鳴:気道閉塞を示唆

  • 呼気性喘鳴:下気道閉塞、声門下移動性異物
  • 吸気性喘鳴:上気道閉塞、声門下移動性異物

2呼吸音減弱:気管支閉塞、胸膜浸出液、気胸、横隔膜ヘルニア、肺腫瘍

3音声共鳴減弱:気管支閉塞、胸膜浸出液、気胸

4AIR入り

あり肺胞のガス交換に問題換気血流比不均等:ガス交換の効率低下の肺胞が存在 肺炎、無気肺、肺水腫、肺うっ血 シャント:極端な換気血流不均等分布状態。 先天性心奇形、高度無気肺 拡散障害:肺胞壁や間質の肥厚 間質性肺炎、肺線維症、ファロー四徴症
血液の酸素運搬能低下心拍出量低下 頻脈、発汗、哺乳不良、浅速呼吸 尿量減少、胸痛、動悸 左心不全、不整脈
心的要因過換気症候群 過呼吸、呼吸性アルカローシス、痺れ
なし気道狭窄呼気性喘鳴:下気道閉塞、声門下移動性異物 気管支喘息、気管支炎 吸気性喘鳴:上気道閉塞、声門下移動性異物 声門下狭窄、口喉軟化症
気道閉塞吸気性呼吸困難
肺が広がらない多呼吸、努力呼吸 肺炎、気胸、胸水
胸郭、横隔膜運動不良努力呼吸あり、胸郭の動き少ない 筋疾患、神経疾患 左右差あり 横隔神経麻痺、気胸

検査

動脈血ガス分析  

Pao2↓Paco2↑換気不全
Pao2↓Paco2↓拘束性換気不全
Pao2→Paco2過換気症候群

胸部X線検査 

肺野の異常陰影の有無、異常血管陰影の有無、横隔膜の位置の異常、心陰影・胸腺陰影の拡大・縮小の有無

治療

1気道確保
異物や分泌物の除去。頭部後屈伸展、下顎挙上体位は気道の確保に必要であり、肩枕などを使用する。

  • 頭部後屈顎先挙上法:頭を後屈させ、顎を挙上する
  • 下顎挙上法:脊髄損傷の疑いがある場合、下顎を両手で挙上させる。
  • エアウェイ:舌根部を押し上げる。
  • 気管挿管:

2酸素投与:PaO2 60mmHg以下もしくはSpO2 90%以下

  • 酸素マスク:実際の濃度が不明、装着の仕方により酸素吸入量が変化
  • 鼻カニューレ:会話、食事可能。実際の濃度が不明、渧泣により酸素濃度低下
  • 酸素テント:酸素濃度、湿度調整可。処置がしにくい。不安感を持つ。
  • 保育器:酸素濃度、温度、湿度調整可。新生児に使用。
  • ヘッドボックス:高濃度酸素投与可。新生児、乳児に使用。

3用手人工呼吸

  • ジャクソンリース:バックに調節バルブをつけることにより気道内圧を調整することができるが、バック膨張に酸素が必要。
  • アンビューバック:バックに自己膨張機能がついて酸素がなくても人工換気可。送り込んだ空気が漏れない様にカフを膨らませる。

呼吸しやすい体位 肩枕や安楽枕などを使用して、上半身をやや高くし、胸郭を広げるようにして後頭部後屈伸展、下顎挙上位を確保し、起座位をとる。

心身の安静の保持 不安や興奮は酸素消費に繋がるため、できるだけ患児が安心感を得られるような、患児に合わせた環境を提供する

砂糖萌🐾

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